グルジア語 勉強庁
文 法
名詞の格 ⑵
名詞の格と動詞
マーク  introduction
 名詞の格と動詞の組み合わせについてまとめます。
マーク  contents
前半〕1. 名詞の格変化
    2. 名詞の複数形
〔後半〕3. 名詞の格と動詞

3.名詞の格と動詞

 主語が必ずしも主格になるとは限らないと前半で書きました。では、どういうときに何格になるのでしょう。文中での役割と格の対応を、動詞の活用ごとに以下にまとめます。いきなり表を見てもピンと来ないでしょうから、必要なときにこの表に戻って確認すれば十分かと思われます。
 なお、このサイトでは動詞の時制、相、法をまとめて「時・相・法」(英 screeve)と呼んでいます。

 マーク 2.a 2類・4類動詞の格パターン

2類動詞
 主 語
(〜は)
間接目的
(〜に)
主 格 与 格
4類動詞
 状況・事物
(〜は)
 主 語
 感受者・所有者
(〜において)
 目 的 語 
主 格 与 格
 参考 ☞ Aronson p.344, p.462/エクスプレス pp.108-109

 まずは簡単な2類動詞から見ていきましょう。
マーク 2類動詞は常識どおり(?)に主語が主格を、間接目的語が与格を取ります。2類動詞は基本的に自動詞(とくに変化を示す自動詞)なので直接目的語はありません。

マーク 4類動詞は主に感情や感覚を表す動詞です。4類動詞では右上の表のように、
  原因となる人・事物・状況:主語=主格
  感受者=感情や感覚を覚える人(私など)目的語=与格
になります。

 一般論ではわかりにくいので簡単な例をあげてみます。

〈4類動詞〉
「私は花子を愛する」
感受者=目的語与格 原因=主語主格 動詞
私に(与格) 花子は(主格) 愛する感情をもたらす
 
「私たちはラジオを持っている」
所有者=目的語与格 存在=主語主格 動詞
私たちのもとに(与格) ラジオが(主格) ある   
 参考 ☞ Aronson pp.332-333/エクスプレス 17課

 感情や感覚の表現の場合、欧米語でも「私にとって……だ」と表すことがありますので、とくに珍しい文型ではないと思われます。たとえば英語の It seems to me that ... やフランス語の Il me semble que ... などがそれに当たります。オレンジ色の部分が「私に(とって)」という間接目的語になっています。
 所有や存在の場合は存在する物が主語となり、「誰々のもとに〜がある、いる」という形になります。日本人には自然な構文でしょう。

 なお、Aronson §12では感受者・所有者を「主語だけど与格」、原因のほうを「目的語だけど主格」と説明しています。こういうねじれはやや強引な印象を受けるうえ、それに合わせて4類動詞だけ人称マーカーの規則を変えることになり、統一性が破れてしまいます。なので、個人的にはエクスプレス 17課のように、感受者・所有者を「目的語で与格」、原因を「主語で主格」と解釈するのが自然だと感じます。当サイトではエクスプレスの解釈に従います。

 マーク 2.b 1類・3類動詞(第1活用動詞)の格パターン

 1類と3類の動詞(第1活用動詞)に対する格パターンは少し面倒です。というのも、時・相・法によって使われる名詞の格が変わるからです。Aronsonテキストには下のような表が載っています。
 

第1活用動詞
(1類・3類動詞)

時・相・法  主 語
(〜は)
直接目的
(〜を)
間接目的
(〜に)
現在・未来1 →  主 格 与 格 与 格
過去 → 能 格 主 格 与 格
完了 → 与 格 主 格
 参考 ☞ Aronson p.344, p.462
注1:不規則動詞「知っている」იცის (iTSis) は例外的に次のような格をとります。
現在 主語→能格、目的語→主格
未来 主語→与格、目的語→主格(4類動詞に準じる)
☞ エクスプレス pp.80-81/Aronson p.462中央

— 説 明 —
マーク(1)現在形未来形
 表の1行目は現在形と未来形です。この系列の格パターンは常識どおりです。
主語主格直接目的語間接目的語与格
なお、この系列には現在形と未来形のほか、条件法や接続法があります。

マーク(2)過去系列
 グルジア語名詞の格パターンのハイライトは、この1類・3類動詞の過去系列にあると言えるかもしれません。上の表から該当部分を抜き出すと次のようになります。
主語能格直接目的語主格間接目的語与格

 能格が使われるのはこの第1活用動詞の過去系列だけのようで、この奇異な文法はグルジア語の面目躍如たるものがあります。

 なお、命令法(肯定命令)の2人称は過去形と同じ形であり、その場合の直接目的語も主格になります。☞ Aronson 6.3 (p.145)/エクスプレス p.48, p.87/Beginner's p.200
 過去系列には、過去形のほか願望法と呼ばれる法があります。

マーク(3)完了系列
 完了系列(現在完了と過去完了)もまた奇妙です。今度は主語が与格です。
主語与格直接目的語主格
 完了系列では間接目的語を格変化で示さず、属格+後置詞 -tvis で示します。このハンパ感がなんともいえませんね。☞ Aronson 10.1.4 (p.278)

 動詞の種類と名詞の格については以上です。
 かなり煩雑な説明になってしましましたが、いかがだったでしょうか(笑)?

revisions
2013.10.13 4類動詞の説明の軽微な変更
2013.5.21 初 版