3.名詞の格と動詞
主語が必ずしも主格になるとは限らないと前半で書きました。では、どういうときに何格になるのでしょう。文中での役割と格の対応を、動詞の活用ごとに以下にまとめます。いきなり表を見てもピンと来ないでしょうから、必要なときにこの表に戻って確認すれば十分かと思われます。
なお、このサイトでは動詞の時制、相、法をまとめて「時・相・法」(英 screeve)と呼んでいます。
2.a 2類・4類動詞の格パターン
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まずは簡単な2類動詞から見ていきましょう。
2類動詞は常識どおり(?)に主語が主格を、間接目的語が与格を取ります。2類動詞は基本的に自動詞(とくに変化を示す自動詞)なので直接目的語はありません。
4類動詞は主に感情や感覚を表す動詞です。4類動詞では右上の表のように、
❐ 原因となる人・事物・状況:主語=主格
❐ 感受者=感情や感覚を覚える人(私など):目的語=与格
になります。
一般論ではわかりにくいので簡単な例をあげてみます。
「私は花子を愛する」 | ||||
感受者=目的語=与格 | 原因=主語=主格 | 動詞 | ||
私に(与格) | 花子は(主格) | 愛する感情をもたらす |
「私たちはラジオを持っている」 | ||||
所有者=目的語=与格 | 存在=主語=主格 | 動詞 | ||
私たちのもとに(与格) | ラジオが(主格) | ある |
感情や感覚の表現の場合、欧米語でも「私にとって……だ」と表すことがありますので、とくに珍しい文型ではないと思われます。たとえば英語の It seems to me that ... やフランス語の Il me semble que ... などがそれに当たります。オレンジ色の部分が「私に(とって)」という間接目的語になっています。
所有や存在の場合は存在する物が主語となり、「誰々のもとに〜がある、いる」という形になります。日本人には自然な構文でしょう。
2.b 1類・3類動詞(第1活用動詞)の格パターン
1類と3類の動詞(第1活用動詞)に対する格パターンは少し面倒です。というのも、時・相・法によって使われる名詞の格が変わるからです。Aronsonテキストには下のような表が載っています。
第1活用動詞
(1類・3類動詞)
時・相・法 | 主 語 (〜は) |
直接目的 (〜を) |
間接目的 (〜に) |
|||
現在・未来1 → | 主 格 | 与 格 | 与 格 | |||
過去 → | 能 格 | 主 格 | 与 格 | |||
完了 → | 与 格 | 主 格 |
— 説 明 —
(1)現在形と未来形
表の1行目は現在形と未来形です。この系列の格パターンは常識どおりです。
主語→主格、直接目的語と間接目的語→与格
なお、この系列には現在形と未来形のほか、条件法や接続法があります。
(2)過去系列
グルジア語名詞の格パターンのハイライトは、この1類・3類動詞の過去系列にあると言えるかもしれません。上の表から該当部分を抜き出すと次のようになります。
主語→能格、直接目的語→主格、間接目的語→与格
能格が使われるのはこの第1活用動詞の過去系列だけのようで、この奇異な文法はグルジア語の面目躍如たるものがあります。
なお、命令法(肯定命令)の2人称は過去形と同じ形であり、その場合の直接目的語も主格になります。☞ Aronson 6.3 (p.145)/エクスプレス p.48, p.87/Beginner's p.200
過去系列には、過去形のほか願望法と呼ばれる法があります。
(3)完了系列
完了系列(現在完了と過去完了)もまた奇妙です。今度は主語が与格です。
主語→与格、直接目的語→主格
完了系列では間接目的語を格変化で示さず、属格+後置詞 -tvis で示します。このハンパ感がなんともいえませんね。☞ Aronson 10.1.4 (p.278)
動詞の種類と名詞の格については以上です。
かなり煩雑な説明になってしましましたが、いかがだったでしょうか(笑)?
revisions | |
2013.10.13 | 4類動詞の説明の軽微な変更 |
2013.5.21 | 初 版 |