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1.動詞の構成
前綴り | 人称接辞 | 語 幹 | 活用語尾 | 人称接辞 | ||
前母音 | 語 根 | 語幹接尾辞 | ||||
▸ 前綴(つづ)り:文法用語では「動詞接頭辞」といいます。
▸ 語幹接尾辞:「P/FSF」と略すことがあります。 |
ひとつの表ですべてを網羅することができないのは文法の宿命ですので、ここでは概要として、上の表の各要素についてわかる範囲で簡単に説明します。
語 根 root
動詞の中核的な意味を担う部分です。
前母音 preradical vowel
語根の前に付く母音で a-, i-, e-, u- の4種類があります。それぞれにニュアンスがあり、どういうときにどの母音が付くかはある程度決まっているようですが、用例は多岐にわたるため、個々のケースごとに覚えたほうがよさそうです。
〈参考〉前母音 ☞ Aronson 13.6 (pp.377-380)
語幹接尾辞 P/FSF
P/FSFは、現在形や未来形の語幹をつくるための接辞という言葉の頭文字です。直訳すると長いので、日本語では語幹接尾辞とか語幹形成辞と呼ぶようです。代表的なものに -av, -eb, -am などがあります。どういうときに何が付くかは、ケースごとに覚えるしかなさそうです。
——以上が語幹の説明です。いくつか例を挙げてみます。
初めて見るとややこしいですが、最初のうちはそんなもんだと思ってぼんやり眺めておけば十分でしょう。☞ 例
┌ーー | 語 幹 | ーー┐ | |
前母音 | 語 根 | P/FSF | |
TS'er - | 書く | ||
sv - | am - | 飲む | |
a - | k'et - | eb - | 作る |
i - | TS'q'- | eb - | 始める |
〈参考〉Aronson p.40
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前綴り | 人称接辞 | 語 幹 | 活用語尾 | 人称接辞 | ||
前母音 | 語 根 | 語幹接尾辞 | ||||
▸ 前綴(つづ)り:文法用語では「動詞接頭辞」といいます。
▸ 語幹接尾辞:「P/FSF」と略すことがあります。 |
〈参考〉
移動の動詞の前綴り ☞ Aronson p.42, pp.93-94/エクスプレス 5課, 12課
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前綴り | 人称接辞 | 語 幹 | 活用語尾 | 人称接辞 | ||
前母音 | 語 根 | 語幹接尾辞 | ||||
▸ 前綴(つづ)り:文法用語では「動詞接頭辞」といいます。
▸ 語幹接尾辞:「P/FSF」と略すことがあります。 |
活用語尾は原則として、(1) 1人称と2人称、(2) 3人称単数、(3) 3人称複数、の3つの形をもちます。表にするとこんな感じです。
人称 | 単 数 | 複 数 | |
1・2 | 語尾A | ||
3 | 語尾B | 語尾C |
このように、グルジア語の動詞の形は、印欧語でいう時制、相、法の概念で明確に区別することができません。そのため、そうした時制、相、法などを一言でまとめて表す呼び方として、文法学者は screeve という独特の文法用語を使います。
私にはその訳語がわかりませんので、弊サイトでは便宜的に「時・相・法」と呼ぶことにします。現在形、未来形、命令法などは、いずれも〈時・相・法〉のひとつです。〈時・相・法〉の種類や分類などについては後で触れたいと思っています。
〈参考〉screeveについて ☞ Aronson p.41, p.44/Wikipedia(英語)
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前綴り | 人称接辞 | 語 幹 | 活用語尾 | 人称接辞 | ||
前母音 | 語 根 | 語幹接尾辞 | ||||
▸ 前綴(つづ)り:文法用語では「動詞接頭辞」といいます。
▸ 語幹接尾辞:「P/FSF」と略すことがあります。 |
人称接辞 person marker
最後に人称接辞について簡単に説明します。人称接辞は人称マーカーともいいます。接辞よりマーカーと呼ぶほうがわかりやすいでしょうか。
人称マーカーには「主語マーカー(接辞)」と「目的語マーカー(接辞)」があります。
・1人称(私, 私たち)が主語のとき、語幹の前に v
・1/2人称の主語が複数のとき、動詞の最後に t |
人称 | 単数と複数 | ||
1 | ვ [v]- 語幹等 -თ[t] | ← 下線部の t は複数のときのみ | |
2 | 語幹等 -თ[t] |
見知らぬ相手や目上の人に対しては、相手がひとりの場合でも主語および動詞の形に2人称複数形を使います。2人称単数形を用いるのは、相手が家族や友だちなどで、ひとりの場合です。日本語の敬語(ですます)とタメぐちの違いに近いのではないかと思います。フランス語やロシア語などの使い分けと同様です。
〈参考〉☞ Aronsonテキスト p.50 注1/エクスプレス 1課-2(p.22)
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§1.4の活用語尾と§1.5の主語マーカーを合わせて表にすると、一般に次のようになるでしょうか。表からわかるように、ある時・相・法の活用は基本的に語尾A, B, Cの3つで決まります。
活用語尾と主語マーカー
人称 | 一 般 形 | |||
1 | ვ [v]- 語幹-語尾A -თ [t] | |||
2 | 語幹-語尾A -თ [t]
(↑ 1・2人称の下線部 t は複数のときのみ) |
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3 | 単数:語幹-語尾B | 複数:語幹-語尾C |
1. 5. 2 目的語マーカー
グルジア語の動詞は、主語の人称を示す主語マーカーが付くだけでなく、目的語を取る場合には目的語の人称を示す目的語マーカーが付きます。
詳細は私もまだ理解していないので、目的語マーカーについて知りたい方は『エクスプレス』の15課と16課あたりをお読みください。
〈参考〉動詞の構成に関する概略は Wikipedia(英語版)も参考になります。
revisions | |
2012.2.14 | phpへの移行、全面的な加筆修正 |
2003.1.21 | 初 版 |