1. 1類動詞の現在形
2. 1類動詞の未来形 3. 現在形と未来形が表すもの |
0.はじめに
*3人称複数形:3人称の主語が無生物の場合は、主語が複数であっても3人称単数形を使うのが普通です。3人称複数の形を使うのは、主語が複数の人や動物(有生物)の場合です。☞ エクスプレス p.32, 2項/Aronson p.89
1.1類動詞の現在形
例外は置いておくとして、現在形の一般的な変化は次のようになります。
人称 | 単数 | 複数 | ||||
1 | ვ-□ | v-[ ] | ვ-□-თ | v-[ ]-t | ||
2 | □ | □-თ | [ ]-t | |||
3 | □-ს | [ ]-s | □-ენ/ან | [ ]-en/an |
前綴り | 人称接辞 | 語 幹 | 活用語尾 | 人称接辞 | ||
前母音 | 語 根 | 語幹接尾辞 | ||||
▸ 前綴(つづ)り:文法用語では「動詞接頭辞」といいます。
▸ 語幹接尾辞:「P/FSF」と略すことがあります。 |
例
エクスプレス p.54の例と重複しますが、「書く」(3人称単数の現在形:წერს, TS'ers)の現在変化は次のようになります。語幹 წერ (TS'er, ツェr) に対して上の接辞が付いていることがわかります。
人称 | 単数 | 複数 | ||||
1 | ვ-წერ | v-TS'er | ვ-წერ-თ | v-TS'er-t | ||
2 | წერ | TS'er | წერ-თ | TS'er-t | ||
3 | წერ-ს | TS'er-s | წერ-ენ | TS'er-en |
— 補 足 —
現在形に関する実用的な話は以上で終わりです。細かい文法に興味のない人は 1類動詞の未来形 に飛んでください。
以下では、英字転写の色の違いが気になった人のために補足をします。まずは動詞の基本構成の表を再掲します。(動詞の基本構成については ☞「動詞, 構成要素」参照)
前綴り | 人称接辞 | 語 幹 | 活用語尾 | 人称接辞 | ||
前母音 | 語 根 | 語幹接尾辞 | ||||
▸ 前綴(つづ)り:文法用語では「動詞接頭辞」といいます。
▸ 語幹接尾辞:「P/FSF」と略すことがあります。 |
変化表のオレンジで網掛けしたvとtは上の人称接辞に対応し、緑で網掛けしたsとen/anは活用語尾に対応します。
もう少しいえば、
・v は主語が1人称であることを示し、
・t は主語が複数であることを示します(3人称は除きます)
これらは人称を示すマーカーであり、動詞の時制、相、法(時・相・法)に関係なくこの形が付きます。
一方、活用語尾であるsとen/anは、現在と未来における3人称の語尾です。時・相・法によって形が変わります。
2.1類動詞の未来形
1類動詞では現在形と未来形の変化は原則的に同じです。違いは前綴(つづ)り(動詞接頭辞)があるかないかです。
現在形:前綴りなし
未来形:前綴りあり
このページでは順序として現在形の話を先に書きましたが、初学者からすれば、上記のように学習見出し形を出発点にして、未来形の前綴りを取ると現在形になると考えたほうが明快です。☞ エクスプレス p.59/Aronson §2.2.2(p.44)
上に書いたように、未来形の変化は原則として現在形と同じで、前綴りの分だけ違っています。学習見出し形が3人称単数未来形なので、それをもとに接辞を付けます。
例として「書く」(3人称単数の未来形:და=წერს, da=TS'ers)の未来変化を挙げてみます。
人称 | 単数 | 複数 | ||||
1 | და=ვ-წერ | da=v-TS'er | და=ვ-წერ-თ | da=v-TS'er-t | ||
2 | და=წერ | da=TS'er | და=წერ-თ | da=TS'er-t | ||
3 | და=წერ-ს | da=TS'er-s | და=წერ-ენ | da=TS'er-en |
3.現在形と未来形が表すもの
ここまで書いてきて何ですが、現在形と未来形は必ずしも時制を表すものではないようです。両者の違いは時間ではなく完了と未完了(あるいは継続)だそうです。
現在形=未完了相、前綴りなし
未来形=完了相、前綴りあり
前綴りの有無は現在形と未来形の違いだと上に書きましたが、意味からいうと(一般論として)前綴りは完了相を表すといえます。
完了相や未完了相って何だ?ってことですが、イメージとして、1回チャッと行うのが完了相で、進行中のことや繰り返し行うことが未完了相です。たとえば、「住所を書く」という行為は1回チャッと行うことなので完了相(未来形)、「いま手紙を書いている」という進行中のことは未完了相(現在形)という感じです。
これはあくまでも現在と未来の話なので、過去の話はまた別です。その意味で「現在形」や「未来形」という呼び方はそれなりに妥当かなという気はします。
〈参考〉☞ Aronson §2.2.2 (pp.44-45)
revisions | |
2014.10.25 | 補足2(簡略的な表の説明)の追加。 |
2013.10.20 | 「学習見出し形」という言葉の導入と、関連する説明の書き直し |
2013.3.07 | 初 版(3.09に色分けの誤りを修正した) |