グルジア語 勉強庁
文 法: 動 詞
1類動詞, 現在形と未来形
マーク  introduction
 順番として初めに1類動詞の現在形と未来形について見ることにします。
 〈参考〉Aronson 2.2 (pp.41-45)/エクスプレス p.54, p.58
マーク  contents
1. 1類動詞の現在形
2. 1類動詞の未来形
3. 現在形と未来形が表すもの

0.はじめに

 グルジア語の動詞は1類から4類までの4グループに分類されます(☞「動詞, 概要1類動詞は主に他動詞、つまり「〜を作る」「〜を見る」のように目的語を取る動詞です。
〈例外〉目覚める გაიღვიძებს(エ14課)や 眠る დაიძინებს(エ8課)は自動詞ですが、グルジア語では1類動詞として変化します。
 また、グルジア語は現在形と未来形で動詞の活用が似ていますので、合わせて「現在・未来系列」と総称します。呼び方はどうでもいいのですが、活用が似ているのでまとめて取り上げます。
*2人称単数形:グルジア語の2人称単数形は、フランス語などと同じく親しい人に対して使います。一種のため口です。初対面の人や目上の人には、相手が1人でも普通は2人称複数形を使います。 ☞ Aronson p.50, 注1

*3人称複数形:3人称の主語が無生物の場合は、主語が複数であっても3人称単数形を使うのが普通です。3人称複数の形を使うのは、主語が複数の人や動物(有生物)の場合です。☞ エクスプレス p.32, 2項/Aronson p.89

1.1類動詞の現在形

 マーク 1. 1 現在形

 例外は置いておくとして、現在形の一般的な変化は次のようになります。

〈1類動詞の現在形〉
人称 単数 複数
1 ვ- v-[  ] ვ--თ v-[  ]-t
2 -თ   [  ]-t
3 -ს   [  ]-s -ენ/ან   [  ]-en/an
 参考 ☞ エクスプレス p.54
 表中、グルジア語の□と英字転写の[  ]は語幹を表します。つまり、語幹に対して上の接辞を付けると現在形のできあがりです。
 主語が3人称複数のとき(上の表の右下)の接辞:基本的に en ですが、細かい話をすると、語幹接尾辞という要素が -i で終わる場合に en ではなく an となります。つまり -ien が嫌われて -ian になります。☞ Aronson p.43
〔学習見出し形〕
 では、語幹とは何でしょうか?
 動詞の代表形は動名詞ですが、動名詞自体が不規則な場合もあり、私などの初学者には不向きです。そこで、入門書などでは初学者に配慮(!)した見出し形を使っています。弊サイトでは説明の便宜上、これを学習見出し形と呼ぶことにします。※ そういう用語があるわけではなく、私が勝手にそう呼んでいます。
 1類動詞の学習見出し形は3人称単数未来形です。
 マーク 学習見出し形から現在形をつくる:
 規則動詞では次のようになります。
 1. 学習見出し形(3人称単数未来形)から前綴りを取る → 3人称単数現在形
 2. 3人称単数以外は活用語尾の (s) を取る → 語幹
 3. 語幹に上の接辞を付ける
 上記 2.で得られるものが上で言う語幹です。
  前綴りの説明を表示する
前綴りについて〉
 正しくは「動詞接頭辞」と呼びます。弊サイトでは簡単に「前綴(つづ)り」と呼んでいます。前綴りの基本的な役割は、動詞の意味や方向を補足することです。前綴りには、たとえば mi-, mo-, ga-, da- などがあります。

 前綴りは一般に現在形で脱落しますが、完了的な意味合いをもつ一部の動詞では、前綴りが脱落しません
 Aronsonテキストでは脱落する前綴りを「=」で、脱落しない前綴りを「+」でつないで区別しています。弊サイトでも分かる範囲でそれに従います。
 なお、最初から前綴りのない動詞もあります。
〈参考〉☞ エクスプレス 5課, 8課, 12課/Aronson p.42, p.44, pp.93-94
  動詞の構成要素を確認する
マーク 動詞の主な構成要素
前綴り 人称接辞 語 幹 活用語尾 人称接辞
前母音 語 根 語幹接尾辞
  前綴(つづ)り:文法用語では「動詞接頭辞」といいます。
  語幹接尾辞:「P/FSF」と略すことがあります。
〈参考〉Aronson 2.0 (pp.40-41), 表B.1 (p.465)/エクスプレス p.45, p.58

マーク 例
 エクスプレス p.54の例と重複しますが「書く」(3人称単数の現在形:წერს, TS'ers)の現在変化は次のようになります。語幹 წერ (TS'er, ツェr) に対して上の接辞が付いていることがわかります。

1類動詞の現在形の例:書く
人称 単数 複数
1 -წერ v-TS'er -წერ- v-TS'er-t
2 წერ TS'er წერ- TS'er-t
3 წერ- TS'er-s წერ-ენ TS'er-en

— 補 足 —
 現在形に関する実用的な話は以上で終わりです。細かい文法に興味のない人は 1類動詞の未来形 に飛んでください。

 以下では、英字転写の色の違いが気になった人のために補足をします。まずは動詞の基本構成の表を再掲します。(動詞の基本構成については ☞「動詞, 構成要素」参照)

マーク 動詞の主な構成要素
前綴り 人称接辞 語 幹 活用語尾 人称接辞
前母音 語 根 語幹接尾辞
  前綴(つづ)り:文法用語では「動詞接頭辞」といいます。
  語幹接尾辞:「P/FSF」と略すことがあります。
〈参考〉Aronson 2.0 (pp.40-41), 表B.1 (p.465)/エクスプレス p.45, p.58

 変化表のオレンジで網掛けしたvtは上の人称接辞に対応し、緑で網掛けしたsen/an活用語尾に対応します。
 もう少しいえば、
v は主語が1人称であることを示し、
t は主語が複数であることを示します(3人称は除きます)
 これらは人称を示すマーカーであり、動詞の時制、相、法(時・相・法)に関係なくこの形が付きます。
 一方、活用語尾であるsen/anは、現在と未来における3人称の語尾です。時・相・法によって形が変わります。

— 補 足 2 —
 変化表について:1人称と2人称は単数と複数の違いが語尾 (t) の有無だけなので、弊サイトでは下のように簡略化した表を適宜用いています。カッコ内の (t) を付けないものが単数形、付けたものが複数形です。
 〈現在変化の簡略表記〉
人称
変化形
1
-□ (-)
v-[  ] (-t)
2
   □ (-)
  [  ] (-t)
3 単
   □
  [  ]-s
3 複
   □ ენ/ან
  [  ]-en/an
  3人称複数形:語幹末が ① -i以外のときは -en、② -iのときは -an
参考 ☞ Aronson §8.1.2/エクスプレス p.54, p.70

2.1類動詞の未来形

 マーク 2. 1 現在形と未来形の違い

 1類動詞では現在形と未来形の変化は原則的に同じです。違いは前綴(つづ)(動詞接頭辞)があるかないかです。

  マーク現在形:前綴りなし
  マーク未来形:前綴りあり

 このページでは順序として現在形の話を先に書きましたが、初学者からすれば、上記のように学習見出し形を出発点にして、未来形の前綴りを取ると現在形になると考えたほうが明快です。☞ エクスプレス p.59/Aronson §2.2.2(p.44)

 一部の動詞は現在形でも前綴りが付いています。その場合、現在形と未来形は同じになります。Aronsonテキストでは現在形で脱落する前綴りを「=」で、脱落しない前綴りを「+」でつないで区別しています。弊サイトでも分かる範囲でそれに従います。
 現在形と未来形で動詞の形が少し変わるものが若干存在するようです。☞ Aronson p.45
 マーク 2. 2 未来形

 上に書いたように、未来形の変化は原則として現在形と同じで、前綴りの分だけ違っています。学習見出し形が3人称単数未来形なので、それをもとに接辞を付けます。
 例として「書く」(3人称単数の未来形:და=წერს, da=TS'ers)の未来変化を挙げてみます。

1類動詞の未来形の例:書く
人称 単数 複数
1 და=-წერ da=v-TS'er და=-წერ- da=v-TS'er-t
2 და=წერ da=TS'er და=წერ- da=TS'er-t
3 და=წერ- da=TS'er-s და=წერ-ენ da=TS'er-en

3.現在形と未来形が表すもの

 ここまで書いてきて何ですが、現在形と未来形は必ずしも時制を表すものではないようです。両者の違いは時間ではなく完了未完了(あるいは継続)だそうです。

  マーク現在形=未完了相、前綴りなし
  マーク未来形=完了相、前綴りあり

 前綴りの有無は現在形と未来形の違いだと上に書きましたが、意味からいうと(一般論として)前綴りは完了相を表すといえます。
 完了相や未完了相って何だ?ってことですが、イメージとして、1回チャッと行うのが完了相で、進行中のことや繰り返し行うことが未完了相です。たとえば、「住所を書く」という行為は1回チャッと行うことなので完了相(未来形、「いま手紙を書いている」という進行中のことは未完了相(現在形)という感じです。
 これはあくまでも現在と未来の話なので、過去の話はまた別です。その意味で「現在形」や「未来形」という呼び方はそれなりに妥当かなという気はします。
〈参考〉☞ Aronson §2.2.2 (pp.44-45)

revisions
2014.10.25 補足2(簡略的な表の説明)の追加。
2013.10.20 「学習見出し形」という言葉の導入と、関連する説明の書き直し
2013.3.07 初 版(3.09に色分けの誤りを修正した)