グルジア語 勉強庁
文 法: 動 詞
2類動詞, 現在形と未来形
マーク  introduction
 2類動詞の現在形と未来形についてまとめてみます。
 〈参考〉Aronson 3.1 (p.61-)/エクスプレス p.64
マーク  contents
1. 2類動詞

0.はじめに

 グルジア語の動詞は1類から4類までの4グループに分類されます(☞「動詞, 概要。2類動詞は基本的に自動詞、つまり動作の対象がなく自己完結的な動詞です。
 2類動詞には1類動詞と対応するものが多くあります。他動詞と自動詞の対応です。たとえば、
    1類動詞「(何かを)始める」⇔ 2類動詞「(何かが)始まる
    1類動詞「(物を)隠す」⇔ 2類動詞「(自分で)隠れる
などです。また、受動的な意味をもつものも多くあります。
    1類動詞「(何かを)書く」⇔ 2類動詞「(何かが)書かれる

1.2類動詞

 マーク 1. 1 2類動詞の変化

 2類動詞の変化を1類動詞と同じように示すと、次のようになります。

〈2類動詞の現在・未来形〉
人称 単数 複数
1 -□- v-[  ]-i -□-- v-[  ]-i-t
2 -   [  ]-i --   [  ]-i-t
3 -   [  ]-a --ან   [  ]-ian
 参考 ☞ エクスプレス p.64

 表中、グルジア語の□と英字転写の[ ]は語幹を表します。この語幹に対して上の接辞を付けると現在形および未来形のできあがりです。 未来形は、これに前綴りを付けます。

〔補足〕
 変化表のオレンジ色で網掛けしたvt人称接辞であり、1類動詞と同じです。これに対し、緑色で網掛けしたi, a, ian活用語尾であり、1類動詞と異なります。まとめると以下のような感じです。
 1類2類
マーク 人称接辞: 共通(v, t
マーク 活用語尾: -, s, en/an i, a, ian
 マーク 1. 2 2類動詞の語幹
 語幹がわかれば(+未来形の場合は前綴りもわかれば、上の1.1の活用語尾と人称接辞を付けることで現在形ないし未来形が得られます。
〔学習見出し形〕
 入門書の語彙欄などに使われる見出し形を、弊サイトでは便宜的に学習見出し形と呼んでいます。
 2類動詞の学習見出し形は1類動詞と同じく3人称単数未来形です。なお、2類動詞は1類動詞から派生するものが多くあり、1類動詞から規則的に派生する2類動詞については語彙欄に載らないことも多々あります。
 2類動詞の派生方法を知っておくと役立つこともあるでしょうから、以下では1類動詞からの派生方法についてまとめます。規則変化の場合は次の2つに大別されます。

ad を挿入するタイプ〔d型〕
bi にするタイプ〔i型〕

 それではまず(a)のd型から説明します。

マークad を挿入するタイプ〔d型〕

〈2類動詞〔d型〕の未来語幹〉
❐1類動詞が以下の条件を満たすとき:
1. 前母音が a ()- または i ()- である。
2. 語幹に母音が含まれる(=音節を構成する)
3. 語幹接尾辞(P/FSF)が -eb (ებ) である。

 2類動詞の語幹は次のようにしてつくります。
前母音を取り、語幹接尾辞の前に d)を挿入する。
語 幹
前母音 語 根 語幹接尾辞
1類

2類
a () または i ()

なし
そのまま  

d () を挿入
- eb のまま
☞ Aronson §3.1.2 (pp.61-62)

 以上でd型語幹のできあがりです。これに、上に示した活用語尾と人称接辞を付ければ人称変化が得られます。現在形は1類動詞と同じく、未来形から前綴りを取り除きます

 d型の2類動詞は、名詞や形容詞から派生して「〜になる」という変化を示すものが多い。☞ Aronson 3.1.2 p.61

マーク 例
 例としてあまりパッとしませんが、Aronsonテキスト p.62に載っている例を紹介します。上の変化表の語幹の部分に წილდებ を入れ、未来形であれば前綴りの გა を残し、現在形であれば前綴りを取ります。

 1・2人称の単数と複数は人称接辞 (t) が違うだけなので、下の表では1・2人称の単数と複数をまとめて表しています。 (t) が付くのが複数形です。

2類動詞〔d型〕の未来形の例:(顔が)赤らむ
1類動詞の3人称単数未来形:გა=-წითლ-ებ-ga=a-TS'itl-eb-s
↓ 前母音を取って d を挿入(=語幹)+3人称単数の語尾(
2類動詞の3人称単数未来形:გა=-წითლ--ებ-ga=TS'itl-d-eb-a
↓ 必要な活用語尾と人称接辞を付ける
人称 単数 複数
1 გა=-წითლ--ებ- ()
ga=v-TS'itl-d-eb-i (-t)
2 გა=   წითლ--ებ- ()
ga=   TS'itl-d-eb-i (-t)
3 გა=   წითლ--ებ- გა=   წითლ--ებ-იან
ga=   TS'itl-d-eb-a ga=   TS'itl-d-eb-ian
出典 ☞ Aronson p.62

 以上が「 d型」の例でした。次に、もう1つの「 i 型」について見ることにします。

マークbi にするタイプ〔i型〕

 上記〔d型〕以外の2類動詞の多くはこのタイプです。

〈2類動詞〔i型〕の未来語幹〉
 このタイプの2類動詞の語幹は次のようにしてつくります。
1. 前母音があれば i)に変える
2. 語幹接尾辞を ebებ)にする
語 幹
前母音 語 根 語幹接尾辞
1類

2類
 

i ()
そのまま  

eb (ებ)
☞ Aronson §3.1.3 (pp.62-63)

マーク 例
 例として、Aronsonテキスト p.62に載っている例を紹介します。1.1に載せた変化表の語幹の部分に იხატებ を入れ、未来形であれば前綴りの და を残し、現在形であれば前綴りを取ります。

 1・2人称の単数と複数は人称接辞 (t) が違うだけなので、下の表では1・2人称の単数と複数をまとめて表しています。 (t) が付くのが複数形です。

2類動詞〔i型〕の未来形の例:塗られる
1類動詞の3人称単数未来形:და=ხატ-ავ-da=KHat'-av-s
↓ 前母音を i に、語幹接尾辞を eb に(=語幹)+3人称単数の語尾(
2類動詞の3人称単数未来形:და=-ხატ-ებ-da=i-KHat'-eb-a
↓ 必要な活用語尾と人称接辞を付ける
人称 単数 複数
1 და=--ხატ-ებ- ()
da=v-i-KHat'-eb-i (-t)
2 და=   -ხატ-ებ- ()
da=   i-KHat'-eb-i (-t)
3 და=   -ხატ-ებ- და=   -ხატ-ებ-იან
da=   i-KHat'-eb-a da=   i-KHat'-eb-ian
出典 ☞ Aronson p.62

 2類動詞の〔d型〕と〔i型〕に関する説明は以上です。1類から2類をつくるときの不規則変化については機会がありましたら改めて別項で紹介したいと思います。

revisions
2013.10.20 「学習見出し形」という言葉の導入と、関連する説明の書き直し
2013.3.17 最後の動詞「塗られる」の変化表:人称接辞vの位置誤りの修正
2013.3.09 初 版