グルジア語 勉強庁
文 法: 動 詞
過去形と願望法
マーク  introduction
 動詞の過去形と願望法について取り上げます。
マーク  contents
1. 過去語幹
2. 機能と意味
3. 変化形
4. 主語と目的語の格
1.過去語幹
 過去形も願望法も過去語幹から作るため、まずは過去語幹の形を挙げておきます。といっても、未来語幹とほとんど同じで、語幹接尾辞があれば取り、なければ未来語幹をそのまま使います。
 語幹接尾辞とは語根の後ろに付く -eb, -av などの接辞です。
 (動詞の構成要素を表示する
マーク 動詞の主な構成要素
前綴り 人称接辞 語 幹 活用語尾 人称接辞
前母音 語 根 語幹接尾辞
  前綴(つづ)り:文法用語では「動詞接頭辞」といいます。
  語幹接尾辞:「P/FSF」と略すことがあります。
〈参考〉Aronson 2.0 (pp.40-41), 表B.1 (p.465)/エクスプレス p.45, p.58
※不規則:語根動詞〔語幹接尾辞をもたない動詞〕のうち語根の母音が e である動詞には、この e を i に変えるものがあります。また、語根が -ev で終わる語根動詞はさらに v が落ちて -iになります。 ☞ Aronson §5.3.1.c
 過去語幹=未来語幹から語幹接尾辞をとる
(語幹接尾辞がないときは未来語幹と同じ)
マーク 移動の動詞 svla の過去語幹は ვედved)です。
2.機能と意味
マーク 過去形……過去のことを述べます。動詞によっては完了の意味にもなります。英語では aorist と言います。
マーク 願望法……現実とは違うモード、具体的には希望、意図、必要、可能などを表します。仏語の接続法に似ているかもしれません。たとえば「したい「する必要がある「できる」などの主動詞とともに用いてその内容を表します。
3.変化形
 それでは変化形(語尾)を見ることにします。過去形と願望法は語尾が似ていますので、ひとつの表にまとめて示します。
 マーク 3.1 be動詞 q'opn-a と移動の動詞 svl-a
 この2つの動詞は特殊なので最初にまとめておきます。
 マーク be動詞 q'opn-a
q'opn-a:過去形と願望法〉
人 称   過去形   願望法
(たち)   -იყავ- (-)   -იყ- (-)
  v-i-q'av-i (-t)   v-i-q'-o (-t)
あなた(たち)      იყავ- (-)      იყ- (-)
     i-q'av-i (-t)      i-q'-o (-t)
3人称単数      იყ-      იყ-ოს
     i-q'-o      i-q'-os
3人称複数      იყვ-ნენ      იყ-ონ
     i-q'v-nen      i-q'-on
 参考 ☞ Aronson §5.4.2, §6.1/エクスプレス p.77
 マーク 移動の動詞 svl-a
svl-a:過去形と願望法〉
人 称   過去形   願望法
(たち)      ვედ- (-)      ვიდ- (-)
     ved-i (-t)      vid-e (-t)
あなた(たち)   -ვედ- (-)   -ვიდ- (-)
  KH-ved-i (-t)   KH-vid-e (-t)
3人称単数      ვიდ-      ვიდ-ეს
     vid-a      vid-es
3人称複数      ვიდ-ნენ      ვიდ-ნენ
     vid-nen      vid-nen
 参考 ☞ Aronson §5.4.3, §6.1/エクスプレス p.80
 ※実際はこの前に各前綴り(mi-, mo-, SHe- など)が付きます。前綴りについては「移動の動詞(現在形と未来形)」の1.3節をご覧ください。
 マーク 3.2 1類と3類、2類i型の動詞
 1類動詞と3類動詞に加え、2類動詞のうち前母音がi(eも?)のものは、以下の語尾を取ります。
〈過去形と願望法の語尾〉
人 称   過去形   願望法
(たち)   -□- (-)   -□- (-)
  v-[  ]-e (-t)   v-[  ]-o (-t)
あなた(たち)      □- (-)      □- (-)
     [  ]-e (-t)      [  ]-o (-t)
3人称単数      □-      □-ოს
     [  ]-a      [  ]-os
3人称複数(1·3類)      □-ეს      □-ონ
     [  ]-es      [  ]-on
3人称複数(2類i型)      □-ნენ   (同上)
     [  ]-nen  
 参考 ☞ Aronson §5.3, §6.1, §8.1.4/Begi. 11, 12課/エクスプレス 13, 14課
— 注 —
 ( ) 内のtは主語が複数のときに付けます。
 Xが主語マーカー、Yが過去形および願望法の語尾です。
 既出のように、初対面などの相手には、相手が1人でも複数形(つまり-tが付いた形)を使います(2人称複数形の敬語用法
 マーク 3.3 上記以外の2類動詞
 2類動詞で前母音がi(eも?)以外のものは、以下の語尾を取ります。
〈過去形と願望法の語尾〉
人 称   過去形   願望法
(たち)   -□- (-)   -□- (-)
  v-[  ]-i (-t)   v-[  ]-e (-t)
あなた(たち)      □- (-)      □- (-)
     [  ]-i (-t)      [  ]-e (-t)
3人称単数      □-      □-ეს
     [  ]-a      [  ]-es
3人称複数      □-ნენ      □-ნენ
     [  ]-nen      [  ]-nen
 参考 ☞ Aronson §5.3, §6.1, §8.1.4/エクスプレス 14課
 マーク 3.4 主な例外
マーク 母音なし語根(母音のない語根)語幹接尾辞 -eb, -ob
 過去形3人称単数:語尾が (a) ではなく (o) になります。☞ Aronson §5.4
マーク 現在・未来形で母音なし語根 → 多くは強変化過去系列 ☞ Aronson §9.1.1
〈強変化過去系列〉
人 称   過去形   願望法
1·2人称    - (i)   - (a)
3, 単    - (a)   -ას (as)
3, 複    -ეს (es)   -ან (an)
※1人称と2人称複数は、これに上記の主語マーカー(  印)が付きます。
マーク 現在・未来形で母音なし語根+語幹接尾辞 -av
 過去形1·2人称 → 語幹接尾辞 -av を落とし(規則どおり)、さらに語根の子音の間に母音 a を挿入。〔 C1-C2-avC1-a-C2+強変化語尾 〕(C1=子音1、C2=子音2)
 過去形3人称と願望法:通常どおり。母音 a の挿入はない。
マーク 現在・未来形で母音なし語根+語幹接尾辞 -i
 過去形1·2人称(一部の動詞)→ 語幹接尾辞 -i を落とし(規則どおり)、さらに語根の最終子音の前に母音 e を挿入。語尾は強変化。
 ※このほか、語根に母音 a が挿入されるものもある。
マーク 動詞の例外は闇で、私もよくわからないので、最後に名詞の格の話をして終わりにします。
4.主語と目的語の格
 過去形と願望法では、主語と目的語の格について重要な規則があります。1類動詞3類動詞では、主語が能格、目的語が主格になります。下の表の「過去→」の行をご覧ください。2類動詞と4類動詞は通常どおりです。
※能格語尾については ☞ こちら
 語幹 :縮約なし
 語尾〔能格〕
1. 子音幹語幹が子音で終わる
-მა (ma)
〔一般形〕主格:-C-i → 
-C-ma
2. 母音幹語幹が母音で終わる
- (m)
〔一般形〕主格:-Xa, e, o, u → 
 -Xa, e, o, u -m
 ※記号:C=子音,X=任意の音

第1活用動詞
(1類・3類動詞)

時・相・法  主 語
(〜は)
直接目的
(〜を)
間接目的
(〜に)
現在・未来1 →  主 格 与 格 与 格
過去 → 能 格 主 格 与 格
完了 → 与 格 主 格
 参考 ☞ Aronson p.344, p.462
注1:不規則動詞「知っている」იცის (iTSis) は例外的に次のような格をとります。
現在 主語→能格、目的語→主格
未来 主語→与格、目的語→主格(4類動詞に準じる)
☞ エクスプレス pp.80-81/Aronson p.462中央
revisions
2014.10.19 初 版